「可視化」でユーザーと建築会社をつなぐ[業界の可視化編]

公開日:2025.9.19 最終更新日時:2025.9.16

家づくりの最前線で活躍するプロを訪ね、これからの家づくりにあらかじめ知っておきたい考え方や基礎知識をうかがう取材シリーズ。


今回ご登場いただくのは、(株)スタッフ・ワン・代表で40年以上住宅業界に携わってきた大澤正樹さん。長く培ってきた経験や知識を土台として、一歩引いた立場でさまざまな知見共有を行う企業として、業界に求められる「可視化」とそれがもたらすユーザーメリットについて語っていただきました。


(株)スタッフ・ワン 代表取締役社長
大澤 正樹さん

1968年生まれ。1986年から住宅会社に勤務し、さまざまな住宅事業に携わる。2007年に株式会社スタッフ・ワンの前身となる株式会社M&Kシステム(2024年に株式会社スタッフ・ワンへ社名変更)を創業。現在、代表取締役社長を務める。これまで営業・設計・現場監理・商流・プレカット等、住宅に関わるすべての業務を実務で担当。宅地建物取引士。二級建築士。

本当に家を建てたいのか?を自分自身に問うことも必要

「家を建てたい」と思ったときに、多くの方が悩むのが「どこの建築会社で建てるのか?」ではないでしょうか。大手ハウスメーカーから地元の工務店、建築士の設計事務所まで大小さまざまな会社があり、家を建てる初心者にとって数多くの中から取捨選択するのは大変な労力です。 住宅展示場やモデルハウスを巡って家を見て営業の話を聞き、何社かに候補を絞って検討するというのが一般的な流れです。ではその際にどんな点に気を付けておけばいいのでしょうか?

私はよくお客様に、一番最初に「契約前こそしっかり時間をかけましょう」とスケジュール感のお話をしています。完成までの時間や労力を10とするなら、本来は5の力を建てる前にかける必要があると思っています。しかし現状ではほとんどが2くらいの段階で契約し建て始めてしまう。そうするとあとから価値観の食い違いが起きやすく、完成した家に満足しないという結果になってしまいます。  

最初の段階で重要なのが、ユーザーが潜在的に持っている要望を可視化することです。まず本当に戸建てが必要なのかという原点から考えて、自分たちのライフプランや予算も照らし合わせて何が必要なのかを洗い出すこと。そしてモデルハウスを見学する前に、家づくりに必要な最低限の知識を学んでおくこと。その事前準備が、結局は着工後のスムーズな流れや納得のいく家づくりにつながります。

可視化されたデータを第三者視点からプロが分析

一方で、建築会社との契約前の価値観のすり合わせも大切です。残念なことに住宅業界はお客様に対する透明性に欠けているのは確かです。契約するまでに両者のコミュニケーションが不十分で、工事が始まってから矛盾が生じることも。  

それを防ぐには、ユーザーと建築会社双方が正しいデータや価値観を共有することが必要不可欠です。とはいっても家を建ててもらうことを前提にしている建築会社と、知識のないユーザーでは難しいことも。私はそこに第三者の視点が必要だと考えています。つまりユーザー側の視点に立って建築のプロとして状況を分析し、判断やアドバイスができて、建築会社にとっても効率的に契約やスムーズな施工につながる、両者を結ぶコミュニケーションプラットフォームです。  

私がスタッフ・ワンという会社を立ち上げたのはそのためです。もちろん各建築会社でも建築のプロが提案はしていますが、どうしても契約を取るという前提に基づいたお話になります。私たちは建築会社に帰属せず、フラットな立場からユーザーと建築会社双方のデータを整理して「見える化」し、お互いが納得のいく家づくりができるサポートをする、いわばハブの役割を担うスタンスです。お客様の要望や状況を見て、時には「今は家を建てなくてもいい」とアドバイスをすることも。主観や売り上げに左右されない立場だからこそ、それができるのです。

AIやシステムの活用と 人材育成で業界を底上げ

データをクリアに可視化するにあたって重要なのがエビデンスです。住宅業界では「長年の通例」や「なんとなくこうしたほうがいい」という根拠のない判断がされることが多々あります。しかし情報化が進む現代では誰もが一目で分かりやすく、信頼性の高いデータが求められます。また、かけなくて済む労力は効率化を図ることで減らしていくのも大切だと考えます。

そのためにはAIやさまざまなシステムの活用が不可欠で、現在当社では簡単な入力で思い描く家をシミュレートできるプランニングソフトや、イエス・ノーで答えていくと潜在的に考えている家の特徴や、ハウスメーカーがいいのか工務店がいいのか、家に求めるポイントは何かなどが分かる住宅診断ソフトも開発中。また積算ソフト「ズカラカズ」は、積算の曖昧さを解消し緻密な積算を行うことが可能となっています。これはユーザーに正確な情報を伝えるほか、住宅業界の業務効率化にも大きく貢献するものです。  

現在、弊社では時代に即した人材育成にも力を入れていて、システムのほか、業界関係者向けにイチから建築知識や家づくりのノウハウをレクチャーする資料もつくっています。同時に、ユーザーの皆様にも家づくりを学ぶ機会や相談できる場をご提供しています。業界を育て、人を育てて信頼を高め、ユーザーの皆様が家を建てたいと思える業界へ発展していけるよう、これからも力を尽くしていきます。


ユーザーのサポートと同時に住宅会社のサポート機能としての役割も果たしていくことが、スタッフ・ワンのこれからのミッション。提携企業とのコラボレーションも複数予定しています。

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