第43回 「新住協の新パンフレットをご紹介」

公開日:2026.4.13 最終更新日時:2026.4.13

30年以上にわたって在来木造住宅の高断熱・高気密化を研究し、性能とデザインは両立できることを説き続けてきた鎌田紀彦氏。高断熱・高気密住宅の建築コストの適正化にも取り組み、現在、暖房エネルギーが1/2〜1/4で済むような高性能住宅が、普通の人でも十分手の届く価格でつくれるようになっています。 この連載では、氏のこれまでの活動の中で設計した住宅、あるいは氏と共に新住協を支えている会員の設計などを紹介しながら、そこから生まれた新しい技術や、高断熱・高気密住宅ならではのデザイン、計画手法を紹介していきます。

新住協が発足してから今年で37年になります。高断熱住宅の普及と設計・施工技術の改良、開発を続けてきましたが、近年ようやく国も省エネ基準等級5~7を打ち出し、等級4を義務化して、急速に皆さんの関心も高まり、全国のハウスメーカーや工務店も高性能な高断熱住宅の建設に取り組み始めました。隔世の感がありますが、普及・推進を第一に活動してきた新住協も新たな取り組みを始めようと、「わたしたちの家づくり」と題するパンフレットを刷新しました。ここでその一部をご紹介したいと思います。

新住協は住宅技術を総合的に開発 常にオープンに公開

新しいパンフレットは、新住協の会員は「全棟Q1.0住宅レベル-3以上の家づくり」を目指して家づくりをするということを中心に訴える内容になっていますが、新住協が開発してきた技術も紹介しています。私たちは省エネ住宅の技術のみならず、住宅をローコストに、快適に、そして長持ちさせる技術などを総合的に追求してきました。  

私が室蘭工業大学に在籍していた頃、北海道の在来木造住宅の木材腐朽を防ぎ、省エネ、快適化を実現できる高断熱・高気密住宅の工法を提案し、その普及を図るために新住協の前身がスタートしました。私の研究室のみならず、新住協の会員とともに技術の改良と新たな技術開発に取り組んできました。そして、その成果を常にオープンに公開してきました。いろいろな住宅雑誌に投稿したり、誰でも参加できるセミナーを開催したり、実験住宅でその技術を確かめたりしてきました。そうした技術を11項目の図解で紹介します。 

1.透湿防水シートを使った通気層工法

北海道では石油危機の最中、ナミダ茸などによる急速な木材腐朽が起こりました。その原因が、上下が開放された壁の冷気流にあるとして、防湿気密シート、気流止めの施工と、透湿気密シートを使った通気層工法により、完全に解決しました。

2.高断熱・高気密 新在来木造構法の開発

通気層工法の研究により、壁の上下に気流止めを設置すると、GWの性能が100%発揮され、住宅の気密性も向上することを突き止め、改良木造工法として提案しました。この構法の住宅を、「高断熱・高気密住宅」と名付け、普及活動を開始しました。

3.暖冷房エネルギー計算プログラム「QPEX」

省エネ住宅の暖冷房負荷を高精度に推定計算するプログラムです。Q値やUA値ではなく、直接暖冷房負荷で、住宅の省エネ性能を評価するために開発しました。誰でも容易に使えるソフトとして、工務店、設計事務所で使われています。

4.これからのGW断熱の標準工法~GWS工法

この40年間の在来木造工法の変化を取り入れ、近年の法制度の改訂にも対応した、新しい高断熱住宅工法として、新たに提案しました。この工法は、これからの日本のGW断熱標準工法として普及すると考えています。またこの詳細マニュアルは「Q1.0住宅設計・施工マニュアル」として出版され、誰もがこの工法の住宅をつくることができます。

5.とても快適な床下暖房システムの開発

基礎断熱住宅で、床下に放熱器を置き、その上に床ガラリを設けて、室内に放熱する床下暖房を30年ほど前に開発しました。基礎断熱住宅は床表面温度が低くなるのを防ぐためだったのですが、床表面温度が適度に高くなり、とても快適な暖房方式として、全国に普及しています。

6.床下をチャンバーとするローコスト全室暖冷房システム

西日本の夏の暑さに対処して、全室冷房が必要という声を受けて開発を続けています。図は、1階天井裏にダクトエアコンを設置し、熱交換換気と連動させ、天井裏空間をチャンバーとして各室に吹き出す方式です。ブースターファンを補助に使い、手軽に全室暖冷房が実現します。

7.厚い木材を使った30~50年の耐久性を持つ目透かし張り木造外壁の防火構造認定取得

木材外装はお金がかかります。7~10年ごとに塗装のメンテナンスが必要で、とても贅沢な外装です。厚い木材を目透かしに張り、木材の四周を外気に面して、乾燥を促すことによって、メンテナンスフリーの長寿命な外装を実現します。

8.ローコスト、コンパクト総2階建て住宅のプロトタイププランの開発

建築工事費の高騰、宅地の狭小化が進み、住宅を建設することが困難になってきています。こうした中で、Q1.0住宅レベル-3を実現するために、坪単価の安い総2階建て住宅でコンパクトな家づくりは、総予算を圧縮できます。このような住宅をグッドデザインで進めようとしています。

9.ベタ基礎形状の断熱型枠基礎断熱工法

基礎断熱住宅で床下暖房を採用する場合などでは、外周基礎だけではなく土間全面断熱が必要になります。地盤改良が必要な条件下で、断熱型枠やコンクリートの1回打設などを実現する、合理化された基礎断熱工法を開発しました。断熱材には、ホウ酸系の防蟻断熱材を使います。

10.2×10材屋根断熱工法の屋根倍率取得(開発中)

私たちが始めた、2×4工法のたるき屋根を在来木造住宅に載せ屋根断熱とする工法は、広く全国に普及しましたが、平成12年の品確法でまったく屋根倍率が認められず、使えなくなりました。2×4工法住宅では認められているのです。北総研で現在実験を行い、認定を取得しようとしています。

11.既存住宅のローコスト断熱耐震改修工法および既存住宅の部分断熱改修工法

既存住宅は、壁に入れられたGW断熱材がほとんど効かず、隙間風が多くとても寒い状況です。これに気流止めを設置するだけで、断熱材が効くようになり気密性も向上します。既存住宅にも施工できるように、圧縮GWの気流止めを開発し、耐震性能も向上できる、ローコストな工法をもう20年も前に開発しました。現在では青森の会員工務店の実績を参考に、住宅の一部でも改修可能な工法も開発され、全国で施工されています。

私たちは、常に「安くて良い住宅をつくりたい」という願いとともに、どうしたらそうした家づくりが広く普及していくだろうかと考えながら活動しています。

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