第43回 「新住協の新パンフレットをご紹介」

公開日:2026.4.13 最終更新日時:2026.4.13

30年以上にわたって在来木造住宅の高断熱・高気密化を研究し、性能とデザインは両立できることを説き続けてきた鎌田紀彦氏。高断熱・高気密住宅の建築コストの適正化にも取り組み、現在、暖房エネルギーが1/2〜1/4で済むような高性能住宅が、普通の人でも十分手の届く価格でつくれるようになっています。 この連載では、氏のこれまでの活動の中で設計した住宅、あるいは氏と共に新住協を支えている会員の設計などを紹介しながら、そこから生まれた新しい技術や、高断熱・高気密住宅ならではのデザイン、計画手法を紹介していきます。

私たちが省エネ基準等級7を積極的には目指さない理由

パンフレットでは、私たちがQ1.0住宅レベル-3・4を目指す理由と、Q1.0住宅レベル-3住宅が比較的容易につくることができることを訴えています。ここでは、国の最高性能の省エネ基準等級7をつくるのにあまり積極的ではない理由を説明したいと思います。もちろんお施主様が望めば、新住協会員はそうした家をつくることは容易です。お金をかけても最高水準で建てたい人は多いのです。それを否定することはしません。

省エネ基準等級7の住宅は、1~3地域でUA値0.20以上という基準です。UA値とは、住宅の全外皮(床、壁、天井、開口部)の熱貫流率にそれぞれの面積をかけた加重平均値です。熱貫流率0.2の外壁は、HGW16㎏210㎜厚の断熱工法で達成できますから、床や天井も簡単です。

しかし、開口部はトリプルガラスのPVCサッシでも熱貫流率が1.0~1.5程度になります。これを含めて全外皮で2.0以下にするのは結構大変になります。窓を小さくすれば有利ですから、等級7の住宅をローコストに実現するには窓を小さくすることが一番なのです。  

南の窓を大きく取り、太陽熱を利用して暖房エネルギーの削減を図るパッシブソーラーハウスの手法だと、ほとんど等級7の住宅は実現不可能になります。新住協のQ1.0住宅では、そのレベルを暖房エネルギーで評価していますから、Q1.0住宅レベル-3・4の住宅では容易に実現できます。

また、UA値に含まれない、換気の熱損失は莫大なものです。Q1.0住宅では、熱交換換気を利用してこの熱損失の低減を図っていますが、等級7の住宅では熱交換換気を使うかどうかは関係ありません。したがって、その暖房エネルギーには大きな差が生じ、等級7でも莫大な暖房費がかかることもありうるのです。こうした状況を示すのが図1です。

図1 省エネ基準等級7の住宅の仕様の違いによる暖房負荷
主としてUA値で規定される省エネ基準住宅では、換気の熱損失はUA値に算入されないため、熱交換換気を採用するかどうかで、大幅に暖房エネルギーが変わります。第3種換気で、盛岡で約3倍、練馬では約5倍にも増えるのです。 冷房のエネルギーは、窓の日射遮蔽の有無で変わりますが、これもUA値には関係ありません。また、開口部のトリプルガラスを、最近の新型ペアガラスに変えると、UA値は大きく増え、等級7をクリアできなくなりますが、開口部からの日射取得が増えて、暖房エネルギーはあまり変わりません。特に5~7地域の日射量が大きい地域では暖房エネルギーはむしろ小さくなります。

全国版のパンフレットのため、寒冷地の代表に盛岡のデータで示していますが、熱交換換気を使わないと暖房エネルギーは3倍にもなります。また盛岡では、日射を取り込むためトリプルガラスを使わずにペアガラスとすると、UA値は大きくなり等級7をクリアできなくなりますが、暖房エネルギーはほとんど変わらない住宅ができます。また、冷房負荷も日射遮蔽をきちんとすることで等級7の住宅とほとんど変わりません。こうして、開口部を大きくしてなおかつコストダウンも可能になる設計手法が存在するのです。  

北海道では、トリプルガラスを外すことはできませんが、等級7の住宅を建設するときは、必ず熱交換換気を採用することをお勧めします。

断熱工事費がかかりすぎの等級7住宅

この連載の第35回で、工事費がかかりすぎてコストパーフォーマンスが悪くなる等級7の住宅について説明しました。  

省エネ基準等級4に比べて高くなる工事費増分と、30年間の暖冷房費を加えて比較したグラフを掲載しています。図2ではそれに、等級5と6の住宅も加えて計算し直しました。

図2 エアコンで暖冷房した場合の工事費増分と暖冷房費合計の比較

暖冷房をエアコンで行うとして、電気料金を現状の金額とした場合です。傾向はほとんど変わりません。暖冷房負荷は、やはりQ1.0住宅レベル-4より等級7の方が小さくはなっていますが、30年では工事費増分を償却できないようです。  

最後に、前回ご紹介した「Q1.0住宅デザインマニュアル」で、専門家向けですがQ1.0住宅マニュアル3部作が完成しました。それと今回の新住協新パンフレットの表紙を図3に示します。

 
図3 完成したQ1.0住宅マニュアル3部作と新パンフレット

これらの書籍で、新住協のQ1.0住宅での家づくりノウハウはすべてです。Q1.0住宅ではなくてもいいので、高性能で安くて良い住宅の普及が進むことを願っています。

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