デザインの真髄に触れる。「デザインミュージアム・デンマーク」

公開日:2026.4.3 最終更新日時:2026.4.3

フィンランドに半年間滞在していたReplanスタッフがお届けする、北欧の暮らしや建築のこと。

フィンランド滞在時に足を伸ばしたデンマークの首都コペンハーゲン。そこでぜひ、十分な時間を確保したうえで訪れてほしい場所の一つが「デザインミュージアム・デンマーク」です。

公式サイト https://designmuseum.dk/en/

今回は、訪問時の様子と僕の感想をお伝えしたいと思います!

「デザインミュージアム・デンマーク」とは

コペンハーゲンにある「デザインミュージアム・デンマーク(Designmuseum Danmark)」は、1890年に設立され、1894年には建築家ヴィルヘルム・クラインの設計による専用館で開館した「デザイン」をテーマとした博物館です。

その後、1926年に銀行家エミール・グリュックスタートの寄贈を受けて、現在の建物へと移転します。現在の館は 1757年に建てられた旧フレデリク王病院で、建築家ニコライ・アイクトヴェッドとラウリッツ・デ・トゥーラによるロココ様式の建物です。

この改装にあたっては、デンマーク近代デザインの父と称されるコーア・クリントや建築家イヴァル・ベンツェンを中心に家具や展示空間を含めて「空間そのものが展示の一部」となるように再設計されたといいます。

ミュージアムの存在意義は、単なる収蔵・展示にとどまりません。設立当初から「優れたデザインを通じて産業製品の水準を引き上げ、社会全体に品質意識を根付かせる」ことを使命とし、教育的役割も担ってきました。その理念は現代にも受け継がれ、子ども向けのワークショップやデザイン教育プログラムを通じて、社会の幅広い層に創造性を広げています。

貴重な「本物」の家具・インテリアが、当たり前のように館内の各所に置かれている
貴重な「本物」の家具・インテリアが、当たり前のように館内の各所に置かれている
クラシカルな階段とモダンな家具が調和
クラシカルな階段とモダンな家具が調和

巨大なチェア
巨大なチェア
デンマークデザインのテキスタイルの展示。これだけでもう充分すぎるボリューム
デンマークデザインのテキスタイルの展示。これだけでもう充分すぎるボリューム

14個の重要なキーテーマに合わせて区分けされた展示。「日本」というテーマの展示もあって少し誇らしい気持ちに
14個の重要なキーテーマに合わせて区分けされた展示。「日本」というテーマの展示もあって少し誇らしい気持ちに
日本の茶器や茶碗
日本の茶器や茶碗
1500年代から100年単位で区切ったテーブルウェアの展示。「本質的な美しさ」とは何かを考えさせられる
1500年代から100年単位で区切ったテーブルウェアの展示。「本質的な美しさ」とは何かを考えさせられる

コロナ禍を経て、来館者が激増

2020〜2022年には、「歴史的建造物の枠組みを未来につなぐため」として大規模な改装工事が行われ、さらなる文化の発信拠点としての存在感を高めました。その結果、コロナ禍が落ち着いたタイミングも重なったせいか、来館者が激増。

2011年には年間6万人程度だった来館者は、2024年には有料入館者数だけで 34万人を超え、無料エリアを含めると延べ来館者が48万人近くと、過去最高を更新しています。こうした実績は、デザインがデンマーク文化の中でどれほど深く根を下ろしているかを示すものといえるでしょう。

名作椅子のトンネルが圧巻

ずっと居られる名作椅子のトンネル
ずっと見ていられる名作椅子のトンネル

展示は家具や照明、陶磁器、テキスタイル、グラフィックなど多岐にわたりますが、とりわけ「デンマーク・モダンデザイン」を紹介する常設展が大きな魅力です。

名作椅子が並べられたトンネルが来館者を圧倒。ハンス・J・ウェグナー、アルネ・ヤコブセン、フィン・ユール、ヴェルナー・パントンといった巨匠の作品群を通して、20世紀に世界を席巻したデンマークデザインの息吹きを全身で感じ取ることができます。僕はというと、気づけばこのコーナーだけで2時間くらいを費やしていました…。

ウィンザーチェアのエッセンスが、さまざまなデザインに落とし込まれてきたことが一目で分かる展示。こうした進化の過程が見られるのがとても楽しかったし、学びになりました
ウィンザーチェアのエッセンスが、さまざまなデザインに落とし込まれてきたことが一目で分かる展示。こうした進化の過程が見られるのがとても楽しく、学びになった

「過去と現在の対話」を楽しむ建築と展示

まず最初に感じたのは、博物館自体が歴史という時間の積層の上に築かれていて、節目ごとに手が入れられ、時代に合わせて洗練されてきたからこその重厚さや奥行きがあるということです。

1750年代に建物が立ち、1920年代に建築家と家具の巨匠が内装デザインを施し、さらにそれを未来へと継承すべく2022年にリニューアルと、段階を経て美術館は進化し続けています。古きよきものと新しさが絶妙に融合しているたたずまいが、とても魅力的に映りました。

また、入ってすぐはクラシカルな雰囲気の空間だったのが、歩を進めるごとに現代的な空間へと移り変わり、最終的にはモダン→ポストモダン→ポップへとグラデーションで切り替わっていく展示も印象的でした。

このデザインミュージアムの建物や展示には、「過去と現在の対話」が見えるようでした。デザイナーが込めた元来の意図を引き継いで、適切に時代に合った表現へと落とし込み、来館者を魅了するのです。

現代のデンマークデザインの核となる巨匠たちの展示
現代のデンマークデザインの核となる巨匠たちの展示
個人的にとても内容が充実していて満足度の高かったポール・ヘニングセンのコーナー
個人的にとても内容が充実していて満足度の高かったポール・ヘニングセンのコーナー
ヴァーナー・パントンはPOPの代表として展示されていた。カラフルで奇抜なデザインなのに、不思議と違和感がない
ヴァーナー・パントンはPOPの代表として展示されていた。カラフルで奇抜なデザインなのに、不思議と違和感がない
さらにはPOPと近未来的な要素との融合も。「デンマークデザイン」と呼ばれるものの範囲の広さがよく分かる
さらにはPOPと近未来的な要素との融合も。「デンマークデザイン」と呼ばれるものの範囲の広さがよく分かる

「デザイン」には、「人の行動を促す力」があるのだと改めて実感しました。美しいフォルムや色彩は人の感情に直接訴えかけ、「そこに居続けたいと感じる」「座ってみたくなる」「その物がほしくなる」という、行動の動機を引き出します。さらには、「そのものを手にしている」「手の届く場所にある」という状態が、満足感や充足感につながります。デンマークデザインは、その力がとても大きくて、ミュージアムの訪問でさらに虜になりました…。

見学を終えた後には、カフェでひと休み

一通りの見学を終えたら、デザインミュージアムのカフェでひと休みしました。ここがまたとてもいい。テーブルごとにさまざまな名作チェアが置かれていて、座るのも見るのも楽しい空間です。「実はこれ、座って、食事をして、息抜きの中でデザインを楽しむ体験型の展示なのでは?」と疑うほどでした。

たっぷりと時間をかけて
滞在する価値のある素晴らしい博物館

僕が展示を通してとても共感したのは、デンマークの美しさと環境との調和や親和性です。1750年代以降、王立芸術アカデミーが存在した背景には、ヨーロッパの小国であるデンマークが、世界に誇れる「デザイン」を産業および文化のブランドとして確立したいという強い意思と願いがあったことが感じられます。そしてそれが人々のたゆまぬ努力の甲斐あって今日まで受け継がれ、進化し続けていることに深い感動を覚えました。

「デザインミュージアム・デンマーク」は建築自体の歴史的価値、展示内容の豊かさ、そして文化教育的な役割を兼ね備えた、コペンハーゲンを代表する文化拠点です。

観光で立ち寄る方はもちろん、現地に暮らしている方、あるいはこれから移住や長期滞在を考えている方にとっても、この場所は「デザイン」という言葉の本質を肌で感じられる貴重な体験の場になること間違いなしです!

ロの字の建物に囲まれた中庭も最高に気持ちよかった
ロの字の建物に囲まれた中庭も最高に気持ちよかった

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